• 1400年前のヴァイキングの歯から「天然痘ウイルス」を発見! 20世紀に根絶したものと遺伝子が違っていた MEDICAL 2020/07/25 ナゾロジー
    • ヨーロッパ北部の遺跡から出土したヴァイキングの歯の化石から、約1400年前の天然痘ウイルスが発見されたのです。天然痘ウイルスの物的証拠の中では最も古く、既存の記録を1000年近くも遡ると言われています。
      • 遺伝子構造が20世紀に根絶されたものと異なっていました。
      • 研究は、ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジ、デンマーク・コペンハーゲン大学らにより報告されました。
    • 天然痘は、人類史上初めて根絶に成功した唯一の感染症でした。ワクチンの開発により、1977年を境に感染者は出ておらず、1980年5月8日にWHOが「地球上からの天然痘の根絶成功」を宣言しています。
    • 20世紀の天然痘ウイルスと比較すると、活性遺伝子と不活性遺伝子のパターンが大きく異なっていました。ここからウイルスが変異して、より危険な殺人ウイルスに進化する道が複数示されています。これは天然痘ウイルスの変異プロセスを知る上で重要な発見です。ウイルス変化のメカニズムを解明することは、この先、人類を襲う新たな感染症を食い止めるために非常に役に立ちます。
 
  • 【post/with コロナ社会に生きる】 感染症の歴史から見えてきたウイルスと人間の関係 ≪石弘之さんインタビュー≫ 掲載日:2020年07月21日 科学技術振興機構
    • 著書『感染症の世界史』で、今回の大流行を警告したとも言われる環境ジャーナリストの石弘之さんに、感染症の歴史から見たウイルスと人間の関係について聞いた。
    • 「ウイルスの突然変異のパターンをさかのぼっていくと起源が推定できます。コロナウイルスは1万年ほど前に登場したと推定されています。初めはニワトリやブタに感染する家畜の病気扱いでした。1960年代に入って人間の風邪の原因になるウイルスと認識されるようになりました。ただ、こんな大事件を起こすウイルスとは、誰も想像していませんでした」(石さん)
    • 人間が定住するようになって、感染症と人間の関係は劇的に変わった。石さんによると、最初に定住した水辺では川の水を共用したことで水を介した消化器系の病気が流行したが、その後、人口が都市に密集するようになると、人から人へと感染する呼吸器系の感染症が大流行を起こすようになった。
    • 20世紀に入り都市が巨大化し過密化すると、今度は人から人へ飛沫や空気で感染するようになる。呼吸器系に入り込んで、過密社会にウイルスが拡散していく。現在の新型コロナウイルスがまさしくその図式に当てはまるのだと石さんは指摘する。
    • 「人間は高度な社会性を持った動物です。人間は特別に肉体的に優れているわけではありません。ただ、知能と社会性を進化させることによって生存競争に打ち勝ってきたのです。その人間がウイルスによって、互いに殺傷しあう『凶器』に変えられてしまった。関係性を物理的に断てというのは、社会性の放棄にもつながりかねず、これは大変なことです」(石さん)
    • 「庭土をスプーンですくうと、スプーン1杯の土の中に1億以上の生き物がいます。その多くがウイルス。ウイルスは、自然の中でいろいろな役割を果たしています。これからも、ウイルスをめぐっても大発見が続くと思います。自然界は、まだまだ人間の知らないことだらけ。私の80年の人生を振り返ると、最大の楽しみは好奇心と達成感でした。若い人たちには、ものを探求することや考えることに楽しみを感じて、自然の仕組みを解明する達成感を味わってほしいですね」
  • パンデミックの経済的影響と経済対策 ―SARS 等の経験から― 国⽴国会図書館 調査と情報―ISSUE BRIEF― 第1107号 No. 1107(2020. 7.16)
    • ​SARS 流行の際には、中国や東南アジア各国等で、観光業を中心に経済的影響が 生じた。中国、香港、シンガポールなど、影響の大きかった国や地域においては 経済対策が策定され、景気底上げのための財政出動等が行われた。
      • ​SARS は、SARS コロナウイルス(SARS-CoV)を病原体とする感染症である。2002 年 11 月 16 日の中国広東省における感染報告から始まり、北半球のインド以東のアジアとカナダを中心 に、32 の国と地域で感染が拡大した3 。WHO の発表によれば、2002 年 11 月 1 日から 2003 年 7 月 31 日までの間に、全世界で 8,096 名の感染者が発生し、うち 774 名が死亡した 。
    • MERS 流行の際には、韓国では消費が委縮し、小売業や娯楽施設などに影響が生 じた。韓国では補正予算が編成され、景気浮揚のための施策が実行された。
      • ​MERS は、MERS コロナウイルス(MERS-CoV)を病原体とする感染症であり、2012 年 9 月 に WHO に対し報告がなされた。WHO の発表によれば、2019 年 11 月末までに 2,494 名の感染 が確認され、少なくとも 858 名が死亡した。
    • 新型コロナウイルス感染症の流行による経済状況の悪化に対し、各国は次々と経 済対策を発表し、国民生活の維持や経済の下支えに取り組んでいる。過去のパン デミック時における経験を踏まえつつ、今回の流行から知見を蓄積し、今後への 備えを進めていくことが望まれる。
 
  • 〝神対応〟をみせた台湾のコロナ対策、日本が学ぶべきことは? 『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』野嶋剛氏に聞く 友森敏雄 (「WEDGE Infinity」編集長・月刊「Wedge」副編集長) 2020年7月9日 WEDGE Infinity
    • 中国が力で封じ込めたのに対して、台湾は民主的に対応した。
    • 具体的に台湾の対策を見ていくと、まずポイントとなるのが「水際対策」だ。
      • 「台湾は、日本以上に中国への経済依存が大きいですが、1月の後半には武漢のある湖南省からの入国を禁止し、中国からの入国も早期に全面的に閉じました。感染症の蔓延を最優先の国家リスクとしてとらえ、まずは封じ込めることを選んだのです」
      • 「日本は中国の情報をWHO経由で得ていたとみられます。日本がコロナ問題で全体に対応が遅れ気味になったのは、流行初期の1月の段階で、WHOの情報を鵜呑みにしたことが原因の一つだと考えられます。中国は、事態の展開がどうなるかわからなかった1月下旬まではウイルスの深刻さを抑えて伝える情報を中心に対外発信をしていましたが、コロナ対策の態勢が整った2月以降は比較的現実に近い形に変えました。」
      • 台湾の水際対策で驚かされるのが、感染の疑いのある人への徹底した対応だ。
        • 「台湾では、帰国する飛行機のなかでトイレにも行ってはならない。そのためにオムツを用意するという措置までとりました。日本人からすればやりすぎという感じがしますが、それでも『小さな人権を優先してしまえば、より大きな人権が損なわれる』という認識が台湾政府にはあったのだと思います。台湾は感染したかどうかグレーの人も含めて、徹底して隔離しました。その結果、ロックダウンをすることもなく、大半の店舗も通常営業を続けることができました」
      • 「外国の事例を参考にするときには、議論のレベルの違いを知っておく必要があります。例えば、台湾は1次レベル(水際)、韓国は2次レベル(限られたクラスターの発生)、日本3次レベル(複数のクラスター+感染経路不明者の増加)。置かれた状況がことなるので、対応策も違ってきます。ただし、1次である『水際』においては、どの国もやることは同じなのです。台湾はそこでしっかり行動したので、その後の対応もかなり楽になりました」
    • 「マスクの必要性は、SARSのときに在庫が枯渇した経験が生きていると思います。製造機械を政府が買い上げ、業者に作ってもらい、完成したマスクも政府が買い上げて、住民に配る、それぞれのフローのなかで、担当する意思決定者(閣僚)が迅速に対応しました」
    • 台湾で目立つのは、リーダーの意思決定と、コミュニケーション能力だ。日本の場合、閣僚は議員が務めることが多いが、台湾の場合、専門家がそのポストに就くことも珍しくない。情報発信についても、日本のように専門家が行うのではなく、専門家の意見をもとに政治家が行うことが徹底されている。
    • 日本で公衆衛生医は、臨床医によりも格下に見られる傾向があるが、台湾でも2003年のSARSまではそうだったという。
      • 「SARSによって、公衆衛生に対する価値観の転換が図られたのだと思います。米国のCDC(疾病対策センター)を参考に、組織整備が行われ、緊急対応を行う中央病情指揮センターも作られました。感染症対策は、国内だけに止まらない仕事で、語学力、情報分析力など医療と違う領域をカバーできる人材が必要で、台湾ではSARS以降、公衆衛生方面の人材を育てていたことが功を奏しました。
      • 台湾では5月に『公衆衛生師』という資格を設け、危機の際には政府が任命して事態の対処に当たらせる仕組みを作りました。
 
  • 感染症リスクと保障 ―新型コロナウイルスからの示唆― 専門職 渡部 英洋 共済総研レポート №169(2020.6) 2020ー06-20
    • 感染症は人的損害(=発症)に加えて、休業による経済損害等様々なリスク形態をもたらすが、その救済としての保障の側面から見た場合、明らかにこれまでの保障リスクと異なる性格を持ち、様々な課題が挙げられる。 
    • 保障対象化の困難性: ① 発生確率・規模の予見性が困難    ② 目に見えないリスクの不確定性​
    • 以上のような一般論としての保障面の課題はあるが、現時点での新型コロナウイルスにかかる国内の共済・保険の対応は、想定されていなかった感染症ではあったが、みなし措置の拡大等、契約者に便宜を図る方向で進められている。
    • なお、支払対象の拡大・みなし措置については、自粛による損害(休業損害等)は対象外であり、感染症の実際の発生が要件となる。
    • 今後のパンデミックを考慮した場合、共済・保険金の支払いが巨額となる可能性は否定できない。この場合のリスク移転手段として、現在のCATボンド(Catastrophe Bond、大災害債)の手法を感染症パンデミックへの備えとして活用する方途も考えられる。
  • 文明としてのグローバル化とコロナ危機 藤田 昌久 (京都大学経済研究所)/浜口 伸明 (ファカルティフェロー)  2020年6月  20-P-015 独立行政法人経済産業研究所
    • 古代より、文明の進化は、地理的空間においては都市化とグローバル化の進展として現れてきた。空間経済学の視点からは、都市化とグローバル化は、国内および国際間における「人・物・金・情報」の移動費用、つまり広義の「輸送費」の低下とともに進展すると理解される。しかし、「人・物・金・情報」の輸送費の低下は、文明の進化をもたらすだけではなく、それと同時に、ウイルスの国際間における拡散を容易にし、人類に感染症をもたらす。
      • インド起源の仏教と天然痘がシルクロードによって奈良時代の日本に伝えられた。Farris (1985)によれば、735–737 年の天然痘流行によって当時の日本の 25%~35%が死亡したと推定されるが、それでも日本は遣唐使を派遣し続けて先進的な文化や技術の習得を継続するとともに、743 年に墾田永年私財法を施行して農民に土地の私有を認め、農業生産性を上昇させて労働力の減少を補った。
    • 今回のコロナ危機を理解するには、そのような「不都合な真実」に留意する必要がある。しかも、今回のパンデミックは、ICT(情報通信技術)に支えられながらも密なフェイス・ツー・フェイスコミュニケーション(対話)を不可欠とする現代の大都市を中心とする「知識創造社会(Brain Power Society)」に特有のパンデミックであり、人類にとっての「不都合な真実」を新たな形で表している。
    • 人の国際間移動については、世界中の国々はほぼ完全に鎖国の状態にある。空間経済学にとっては、これは国際間の人の移動コストが突然ほぼ無限大に高まったことを意味する。一方、ICT は従来と変わらず機能しており、情報の移動コストはほぼゼロのままである。
    • 新型コロナウイルスのパンデミックは、知識創造社会の中心であり世界で最も豊かな地域である米国とヨーロッパを中心として続いてきた。知識創造社会における中心的な活動において、情報通信技術(ICT)が高度に発展した現在でも ICT とフェイス・ツー・フェイスコミュニケーション(対話)は相互に「補完的」である。「3密」の場が圧倒的に集積している米国東海岸の「平行四辺形」と欧州の「青いバナナ」の活力を生んでいるが、同時にそれらの「3密」の場は自己増殖的な感染拡大の源ともなった。
    • コロナ危機はサプライチェーンを通じて世界経済に深刻な打撃を与え、影響の長期化が懸念される。ポストコロナ危機のグローバル経済の再構築には国際的な協調が必要とされているが、コロナ危機はそのような協調体制が弱体化し、また米中の覇権争いが激化した中で起こったものであり、困難が予想される。多様性を生かし創造性を競う新たな国際体制の構築が求められる。
    • 7~9 世紀において、世界文明全体は、東に唐と、西にササン朝ペルシャの、二つの覇権王国を双極としながら、中心に位置する中央アジアを取り巻く形で、東アジア、東南アジア、南アジア、中東、ヨーロッパ、北部ユーラシアの六つの異なった文化圏が栄える多様性に富む世界であった。当時の唐を現在の中国、ササン朝ペルシャを米国(あるいは米国 plus ヨーロッパ)で置き直すと、大局的に見れば、シルクロードが最も繁栄していた 7~9 世紀の世界と現在の世界はほぼ同型であると言える(藤田 2020)。
    • 今回のコロナ危機は、善かれ悪しかれ、世界各国の経済社会と文化の特性を炙り出してきたと言える。これを奇貨となし、世界各国・地域はお互いから学びつつ独自の経済社会文化を発展させながら、コロナ危機を乗り越えて、自国優先主義と排他的対立ではなく、多様性の豊かな新たなグローバル社会の構築に向けて貢献していくことが期待される。
 
  • 世界が迎える大転換と日本の課題 わが国はいまこそ「知の自立」を果たさなくてはならない――100年前のスペインかぜと今日のパンデミックを取り巻く相違をふまえつつ、コロナ以後の世界と日本を問う 中西寛(京都大学法学研究科教授)2020/06/15 PHP総研
    本稿は『Voice』2020年7月号に掲載されたものです。
    • 今後の流行とその対策について確言できる人は誰もおらず、未来について語るのは明らかに早すぎる。それでもわれわれは考え始めなければならないし、その際に手がかりとなるのは人類の過去の経験としての歴史であろう。とくに注目したいのは、大量の死者を出したこのパンデミックがその後、忘れられてしまったことである。
    • 忘れられてしまったのは、主に二つの理由が考えられる。第一は、このパンデミック以降の医学の発達により、もはや人類が感染症を克服したと考えられた時期が存在したことである。第二は、20世紀前半の人びとの価値観のなかでは、感染症よりも戦争や革命といった政治的、社会的問題のほうが重要であり、感染症はその死者の多さにもかかわらず、人びとの意識のなかでその陰に隠れてしまったという事実である。
    • ​21世紀に入って、それまでカゼ・ウイルスとして軽視されてきたコロナウイルスが強毒化してSARS、MERS、そして今回の新型コロナウイルスを生みだしてきた。これら人獣感染症の増加は、人口増・都市化による人類と野生動物の接触頻度の増大と、人間の移動量とスピードを加速したグローバル化によるものと考えられる。
    • 人間と病原体の戦いという視点でみるなら、新型コロナは恐らく史上初めて人間が向き合う、ゲリラ戦型のウイルスではないかと思う。つまり、人間の医学的能力に対して致死性や感染力で直接対抗するのではなく、医療体制の背後にある人間社会の弱点を攻撃することで自らの繁殖圏を広げる性質をもっているようにみえる。
    • このようなウイルスが登場し、世界を塗り替えるパンデミックを引き起こしたことには構造的背景があるだろう。それはグローバリゼーションが単一の価値基準によって極限まで合理化され、それによって社会的脆弱性を堆積させていたことである。単一の価値観、この場合は資本の論理で社会を合理化していくことは社会の多様性を損ない、脆弱にする性質をもつ。
    • その兆候が示されているように、現在のパンデミックはすでに存在している政治的、経済的、社会的亀裂を解消するよりも拡大する方向に作用しつつある。資本が無制限に供給され、租税国家の構造が大きく崩れつつある今日、資本主義は市場経済以外の何ものかに変貌しつつあるのではないだろうか。
    • 経済社会において、カネとモノの相対的な重要性が低下するのと反比例して重要性が増しているのが、ヒトと情報であろう。ヴァーチュアルな世界がリアルな世界に置き換えられる傾向がさらに強まれば、大都市に集住する必要性は低下し、また遠距離をヒトやモノが物理的に移動することに伴う時間やエネルギーの消費を抑えることができるだろう。
    • しかしまた情報技術の進展は、ヴァーチュアル化やデジタル情報化で置き換え不可能なもの、リアルな人間の交わりが人間にとってもつ意味空間の価値を気づかせ、さらに高めうる要因となろう。総じて、人間社会のすべてをデジタル化していくことはできないし、アナログ的な要素は人間の強みである。情報テクノロジーの発達という必然的な環境のなかで、デジタル化、ヴァーチュアル化すべきものと、できないもの、すべきでないものの切り分けと組み合せが今後の世界的課題となるであろうし、日本が自らの実践を鋭ぎすますことによって世界に貢献できるあり方ではないだろうか。
    • 日本は自らの利点と弱点を普遍的な価値基準で分析し、ビジョンをつくっていく必要がある。必要なのは、客観的、包括的視点からの自己評価であり、ビジョンの構築であり、課題の設定である。パンデミック下の世界にあってあらためて感じるのは、自らを徹底的に客観化するという意味での知の自立の必要性である。​

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