• ポストコロナの世界と日本 ─レジリエントで持続可能な社会に向けて 三菱総合研究所 2020.7.14
    • コロナ禍での経験は、これまでの世界の大きな潮流を変化させた。その変化には、①既に表れていた潮流の加速、②新たな潮流の出現、③価値の再認識、の3通りがある。これらの視点から、ポストコロナの社会を方向づける3つの潮流を抽出した。
    • ポストコロナで目指すべきは、「レジリエントで持続可能な社会」の実現と考える。このレジリエントで持続可能な社会とは、感染症等のショックに対しても柔軟に耐える社会であるとともに、地球環境を維持しつつ、経済の豊かさ、そして個人のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)を持続的に両立できる社会である。
    • この社会を実現するための方向性として、(1)レジリエンスを高めるために「自律分散」的なシステム構築を目指すこと、(2)政府、企業、市民が持続可能性を重視し「協調」的な動きを行うこと、の2つの軸を据えた。
    • 国際、産業・企業、社会・個人の3分野において、「自律分散」と「協調」の2つの軸で向かうべき方向性を整理すると、国際分野では、①ルールに基づく国際秩序の再構築、②重層的な国際協調が、産業・企業分野では、③デジタルとリアルの融合による新たな付加価値の創出、④マルチステークホルダー経営が、社会・個人分野では、⑤自律分散による社会の強靭化、⑥利他的視点に立った協調、が鍵となる。
 
  • コロナ禍の東京・New York比較と医療イノベーション 2020.07.09 キャノングローバル戦略研究所
    • わが国では、医療機関の混乱を防ぐ目的で保健所がPCR検査を意図的に抑制したことで、市中感染の進行を把握できずに一般の医療機関でクラスターが発生、国民の診療自粛、COVID感染患者を受け入れていない医療機関でも一般医療の縮小、収益悪化という事態に陥った。東京都はNew York市に比べてCOVID19感染患者が35分の1、病床数が3倍であるにもかかわらず実質的に医療崩壊したのである。
    • 多くの先進諸国では医療技術の進歩と共にIntegrated Healthcare Network(略称IHN)と呼ばれる仕組みが医療制度の中核を担うようになっている。New York市には、6つのIHNがある。そのうちNYC Health+Hospitalsは公立病院を核にしたIHNであり、残りの5つは民間非営利病院を核にしたIHNである。
      • IHNは、セーフティネットの責務を果たすために、平時は病床に余裕を持たせる運営をしてきた。
        第1波の際の学習効果もあり、6つの各IHNが設置しているコロナ専門病院を強化し、第1波の時にセントラルパークなどに増設した臨時病床を活用すれば、危機をコントロールできる可能性がある。
        • コロナ専門病院とは、中等症以上のCOVID19感染者を受け入れることに特化した病院のことである。その役割は、患者を特定施設に集約することでCOVID19によって一般医療の機能が浸食されることを軽減することにある。
    • 現在は新規感染者数や重症者数のレベルに応じて都内医療機関に個々に協力依頼をして必要病床を確保する方針のようである。これは、4月初旬にCOVID19感染が疑われる発熱患者が救急車でたらい回しに会った時と変わらない仕組みで第2波に臨むことを意味する。秋に予想されている第2波が第1波の数倍のCOVID19感染者になった場合、現状のままで東京都の医療体制が持ちこたえられるとは思われない。
      • 東京都と比べて感染者が35倍、病床数が3分の1のNew York市の医療提供体制は、核となっている6つのIHNが倒産すことなく、コロナ禍前の状態に戻りつつある。第2波、第3波とCOVID19との闘いが長期戦になればなるほどIHNの意思決定メカニズムがその力を発揮するはずである。
    • 日本以外の先進諸国の多くでは、デジタルヘルスのインフラが既に完成しており、主たる医療機関のWEBサイトにはDigital Health、eHospital、Virtual Careの説明が掲載されている。これにAIによるCOVID19感染者の重症化予測、ロボットによるPCR検査などが加わり、医療提供体制の構造変化が本格的に始まったのである。
    • 安倍政権は、「未来投資戦略2017」でPersonal Health Record(国民一人ひとりが自分の電子診療録を管理し医療チーム内で活用できる仕組み)を2020年までに本格稼働させると公約した。しかし、2020年時点でPHRの欠片すら見えない。
      • その根本的原因は、Integrated Healthcare Networkを全国に配置することができていないことにある。医療情報を基盤とする医療イノベーションを社会実装するためには、国民から信頼されるプラットフォーム事業体の存在が不可欠である。国民が自分の医療情報を納得して預けるのは主治医が勤務する医療機関に限られる。その医療機関がプラットフォーム事業体となるには大規模で非営利が条件となる。非営利でなければ開業医など他の医療機関が患者情報共有に参加しないからである。そして、デジタルヘルスなどイノベーションの経済的メリットの大半を最初に享受するのは保険者である。したがって、医療情報プラットフォーム構築の投資コストを原則保険者が負担する仕組みが必須となる。
      • このロジックを反映させた改革を実行しない限り、わが国の医療制度はますます他国の後塵を拝することになる。
 
  • 提言 感染症の予防と制御を目指した常置組織の創設について 令和2年(2020年)7月3日 日本学術会議 第二部大規模感染症予防・制圧体制検討分科会
    • 2 現状と問題点
      • COVID-19 流行は、わが国が新しい感染症に対するレジリエンスが不十分であることを
        改めて認識させ、感染症対策とそれに付随する社会・経済的影響への対応など様々な問題点を浮かび上がらせた。特に対応が困難であった点は、無症状病原体保有者の把握とその対応、ウイルス検査と保健・医療の現状分析と必要な体制の整備、感染源・感染経路対策と、その結果生じたこれまでに経験のない社会・経済的影響への対策と人々の現在と将来の生活への不安・ストレスへの対応、人権問題としての誹謗中傷・差別、入国制限の判断、クルーズ船検疫などであった。
    • 4 提言
      • (1) 内閣府に常設の組織として感染症予防・制御委員会(仮称)を設置すべきである
      • (2) 都道府県に常設組織を設置すべきである
        • 感染症対策に関して都道府県知事に助言を与える専門家の常設組織を設置すべきである。この専門家委員会には、保健所長、感染症の様々な側面に関する学問分野の専門家、医師会・主要医療機関の代表などが入ることが望ましい。
      • (3) 体制の強化
        • 感染症研究の促進、人材の養成、流行時の緊急対策等の観点から、感染症対策に関わる機関の体制を強化し機能を高度化すべきである。特に、国が責任をもって感染症に関するデータセンターを設立し、国内全ての感染症および感染症対策に関する基礎的・疫学的・臨床的電子データを保存すべきである。また、このようなデータを必要とする幅広い研究者に提供し、オープンサイエンス1を促進する環境を整備すべきである。
 
  • 米国をモデルにし、人やカネすべてが東京に向かう時代の終わり 「コロナ後の世界」特集(4)広井良典:京都大学こころの未来研究センター教授 2020.6.26 5:15 DAIMOND online
    • ある意味で日本社会全体が「3密(密閉、密集、密室)」だったともいえるのであり、このように考えると、今回のコロナ禍は、むしろこれまでの日本がいささかアブノーマルだった部分に“気づき”、それを(実は多くの人々が望んでいた)本来の人間的な働き方や生活に転換していく、良き意味での“外圧”ないし契機と、とらえられるのではないだろうか。
    • 京都大学に設置された日立製作所の研究開発グループ(日立京大ラボ)との共同研究で、日本社会の現在、そして未来にとって重要と思われる「人口」や「GDP」「高齢化」といった約150の社会的要因からなる因果連関モデルというものを作成し、AIを使って2050年に向けての2万通りの未来シミュレーションを行った。
      • その中で、2050年に向けた未来シナリオでは、主に東京一極集中に示されるような「都市集中型」か「地方分散型」かという分岐がもっとも本質的であり、しかも人口・地域の持続可能性や格差、健康、幸福といった観点からは、「地方分散型」のほうが望ましいという結果が出たのである。
    • 私は「都市集中から地方分散へ」という方向こそが、アフターコロナの日本社会を考えていく上でもっとも重要な軸になると考える。
      • ここで分散というのは、いわば、個人の生き方や人生のデザイン全体を含む、包括的な意味での「分散型」社会である。つまり、“密”から“散”、あるいは「集中から分散」という方向は、個人が従来よりも自由度の高い形で働き方や住まい方、生き方を設計していくことを可能にし、それは結果として経済や人口にとってもプラスに働き、社会の持続可能性を高めていくだろう。
      • 「コロナ後」の社会構想の中心にあるのは、こうした包括的な意味での「分散型社会」への移行なのである。
    • コロナ禍で多くの人が気づいたのは、人やカネの都市集中に象徴される効率性や便利さをひたすら追い求めてきた社会のもろさであり、その中で格差や貧困化が進んでいる深刻さだ。あらゆる面での「分散型社会」への移行ということを積極的に進めながら、格差・分断を増大させないような姿になるためのさまざまな政策を並行して進めていくことが基本テーマになる。
 
  • 若者を見ればわかる「アフターコロナに爆発する7つの新しい価値観」 自由な時代に「ライブ配信」好調の訳 PRESIDENT Online 吉田 将英 電通 コンセプター/電通若者研究部 研究員 2020/06/11 15:00
    • 若者たちをみていると、コロナ禍で急速に進んだように思われる「価値観の変化」が、すでに先取られていたことに気付きます。電通若者研究部では、その変化を以下の7つにまとめています。
    • 1.殿様化:
      • 自ら出向く「ご奉公型」ではなく、物事の方からやって来てくれる「殿様型」へ、多くの点でシフトしました。Z世代(1995年以降に生まれた若者)の1つのコンテンツの平均消費時間は8秒で、一度に平均5つのスクリーンを使用する。言い換えれば8秒で見切りをつけて次を探しに行く。まさに「多くの陳情を裁く殿様」のような状態です。
    • 2.時決ニーズ:
      • コロナ禍は多くの人に「時間の裁量」を与えました。自由ということは、社会規範により決められていた「一律の時間」で生きる度合いが減り、個々人が「それぞれの時間」を生きる度合いが増えたとも言えます。
    • 3.能動圧力:
      • 社会からすれば、何も能動的にやらないで家にいる自分は「いないのも一緒」なのではないか。そういった「能動的でないといけないと感じる圧」は強まったとも言えます。動画配信やツイートは、この心理の表れでしょう。
    • 4.Mind to Mind:
      • 若者の価値観はコロナの前から「同一性に基づく信用」にこだわるよりも、「多面性を前提とした信頼」へと、シフトしていました。Face to Faceでコミュニケーションをすることに本質はなく、大事なのはMind to Mindで向き合っているか。若者はもとより、他者を「フィジカルな同一性でしか信用しない」という価値観から移行していたわけです。
      • 見えない他の面について過度に詮索したり疑ったりすることはしない。このシフトは、感染拡大を避ける生活様式を検討する中で改めて浮き彫りになった手続きや業務の非効率性の課題も相まって、不可逆な変化として続くでしょう。
    • 5.アンダーコントロール感:
      • 人と人との間に時間や空間、物質を介在させることが、「物事をアンダーコントロールできている安心感」になっています。ともすると人間にとって最もコントロールできないのは「他の人間である」という感覚は、悲しいかな当たり前のものとして残るでしょう。
      • 一方、今回のリモートワークの会議で「スモーカーの上司がタバコを吸いながらうれしそうに参加していた」というように空間や物質を人と人の間に介在させることが、互いが生きやすくなる上で良い作用をもたらすこともあるわけです。
    • 6.オピニオンファースト:
      • 自己表現のパラダイムが自分の外側に存在する「客体を使ったアプローチ」から、自分自身の内側からの「主体的なアプローチ」に変わりつつあります。これらを踏まえると客体をビジュアルで表現する方法から、よりその人の意見や主義といった非物質的な「オピニオン」が重視されていくと見ています。
    • 7.不文律のリセット:
      • コロナ禍があらゆる人にとって未知の体験だったために、「前提をリセットしたピュアな疑問」を若者以外の世代も抱くこととなりました。これまで大勢の人が「なんとなくそういうものだから」という理由だけで行ってきたことが瓦解しつつあります。よく考えたら必然ではなかった行為は、「しなくてもいい行為」としてデリート対象になり、今後急速に支持されなくなっていくでしょう。
    • 以上7つの変化のすべてに共通するのは、「自分の生活の自由度を、自分で編集しているか」という問いが個々人に改めて強く提示されたということではないでしょうか。
    • コロナ禍ではこれまでのさまざまな常識が覆されました。その結果、若者たちは「社会が提示する価値観や常識だからといって間違いないとは限らない」ということを学習したと思います。
    • 若者とは社会で「最初に新しくなる人」とも言い換えることができ、われわれはそのような存在だと捉えています。7つの変化は若者のみならず、今後ますます社会全体に広がっていくでしょう。

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