• データで見るコロナの軌跡 データブック国際労働比較2020 特別編集号 2021 年 4 月 独法労働政策研究・研修機構 調査部
    • 当機構では例年、日本と諸外国の実態がわかりやすく理解できるよう編集した
      「データブック国際労働比較」を発行しています。しかし、今年度については、新型コロナウイルスの影響によって各国が現在進行形で直面している経済や雇用の大きな変化について、統計データを通じてできるだけリアルタイムで把握し、ウェブサイトで提供することに努めてきました。本特別編集号は、約 1 年にわたる成果をまとめたものです。
    • 新型コロナウイルスの蔓延が経済社会に及ぼしている影響は、実際には複雑かつ多岐にわたり、マクロレベルの統計データによる比較可能性には限界がありますが、各国における現状の理解に少しでも役立つようなら幸いです。
    • 目次
      1. 感染状況の推移と雇用維持施策
      2. 経済活動への影響
      3. 雇用への影響
 
  • ワクチン接種率で決まる世界経済 ~ワクチン接種が遅れる日本経済の悲劇~ 永濱 利廣 第一生命経済研究所 2021.04.12
    • 人口当たりワクチン接種率を説明変数、PMIの水準を被説明変数として単回帰分析をすると、サービス業PMIとワクチン接種率の関係が深いことがわかる。この背景には、ワクチン接種により移動や接触を伴うサービス関連産業がより恩恵を受けることがあろう。
    • 効率的な医療提供体制の構築が遅れ慎重な国民性の日本経済を正常化に近づけるには、諸外国以上にワクチン接種に伴う集団免疫獲得の必要性が高まろう。しかし、人口当たりのワクチン接種率の国際比較をすると、日本の接種率が圧倒的に低い。医療提供体制の差がある一方で、ワクチン接種率が圧倒的に遅いとなると、日本経済の回復が諸外国に比べて大幅に遅れることが必然。
    • ワクチン接種率が進む欧米中心に集団免疫が獲得されれば、経済政策が出口に向かう。仮に日本でも経済政策を出口に向かわせる議論が高まり、欧米経済と違って経済の正常化から程遠いのに経済政策の出口に向かうと、日本経済は正常化に向かうチャンス失うことになる。
    • およそ4人に一人がワクチンを接種しているとされる高所得国では早晩集団免疫が獲得され、サービス関連産業の回復も期待される。これに対し、高所得国にもかかわらずワクチン接種が遅れている日本では、まだ100人に一人しかワクチン接種が進んでいない。そのため、他の高所得国がK字型回復を脱したとしても、日本は当面K字型回復から脱却できない。世界経済はワクチン接種が進む多くの高所得国が正常化に近づく一方で、ワクチン接種が遅れる日本や500人に一人しか接種が進んでいない途上国の回復が遅れるK字型回復になることが予想される。
    • コロナショックは移動や接触需要を急激にシュリンクさせたことで業種や産業間でK字型回復をもたらしたが、今後はワクチン接種率の格差により、国間でのK字型回復をもたらす。特に日本は高所得国の中で数少ないワクチン接種が遅れている国であることから、他の先進国に比べて経済の正常化が大幅に遅れ、デフレ克服がより困難になる。
 
  • アメリカのワクチン接種はなぜ急速に進んだのか︖ ⽇本が学ぶべきヒント ㈱⽇本総合研究所 国際戦略研究所 佐藤由⾹⾥研究員 論座 2021 年 0 4 ⽉ 0 9 ⽇
    • バイデン政権発⾜以来、猛スピードでワクチン接種の前倒しを⾏い、就任時に掲げていた「100⽇間で1億回接種計画」は59⽇間で達成され、現在は、更に接種目標を2倍に増やし、就任100⽇以内で「2億回接種」と新たなゴールを掲げている。
      • ニューヨーク・タイムズの試算によれば、このペースでいけば⽶国は 6 ⽉中にはいわゆる「集団免役の獲得」(定義的に⼈⼝の約 7 0 〜 9 0 %以上がワクチン接種を完了)を達成し、秋までには⼦供( 1 2 〜 1 6 歳)の接種が開始される⾒通しである。
      • ⽇本は 英国の医療調査機関の調べ によれば国内の集団免疫獲得時期は「 2022 年 4 ⽉」と、⽶国に約1年の遅れが⾒込まれている。
    • ⽶国ワクチン戦略︓5つのキーポイント
      • ⼤規模なワクチン接種プログラムには、開発 → 製 造 → 集団接種という3つの⼤きなハードルが存在する。⽶国がそれらを克服し、迅速に展開するにあたりキーポイントとなったのが、 ①被害の⼤きさ、②資⾦⼒と市場規模、③⼤規模サプライチェーンの創出、④収容・⼈員キャパシティ、更に⑤啓蒙活動 、という 5 つ の要素であった。
        • トランプ⼤統領(当時)は「ワープスピード作戦」の下、約 140 億ドル(約 1 兆 5 千 万円)もの予算を 2 3 種類のワクチン開発の関連契約に投⼊し、他国を圧倒した(結果、 3 種類のワクチンが緊急使⽤承認を獲得)。
    • 「分野横断的アプローチ」が成功のカギ
      • ⽶国のワクチン戦略の特徴づけるものとは、⼀刻も早い「集団免役の獲得」という共通ゴールの下、政治家ではなく、各分野のプロフェッショナルが⾏政組織や医療施設で異なる分野や機能を越えた連携をリードし、科学的根拠を⽤いて意思決定を⾏っていること、が挙げられる。
        • ⽶メイヨ ― ・クリニック(ミネソタ州ロチェスター市、⽶国でトップクラスと⾔われる総合病院)が策定した「 ワクチン接種プログラム 」によれば、事前の迅速かつ⼊念な段取りや課題の解決には、複数の分野に亘る機能にまたがる分野横断的アプローチ( “multidisciplinary approach” ) * 2 が、成功のカギであるとしている。
    • ⽇本は今後、明確なゴール設定のもと、柔軟かつ丁寧に、ワクチン集団接種に向けた政府主導のロードマップを策定し、国⺠に分かり易く説明した上で、産官学を越えた幅広い連携のもとに円滑に実施していくことが喫緊の課題である。
       
  • 感染症の影響による女性就業者及び雇用者の変化について 2021年4月9日 今週の指標 No.1257 内科府
    • 感染症の影響を最も受けた女性就業者の特徴は、対個人向けサービス業の飲食・宿泊業や卸売・小売業等に従事し、年収は社会保険が適用されないとみられる 100 万円未満であり、パート・アルバイトとして働く世帯主の配偶者や世帯主と同居する子又は子の配偶者(副次的な所得稼得者層)、となる。他方、同期間においても、人手不足解消や、同一労働同一賃金の導入等もあり、単身者や世帯主の配偶者において、正規化が進んだと推察される。 
 
  • 2020年度 「負債1,000万円未満の倒産」調査 東京商工リサーチ 公開日付:021.04.08
    • 2020年度(20年4月‐21年3月)の負債1,000万円未満の企業倒産は、616件(前年度比20.0%増)だった。2000年度以降で最多だった2009年度の566件を抜き、最多記録を更新した。
    • 負債1,000万円以上の企業倒産が、コロナ禍の支援策で歴史的な低水準をたどるなか、業績改善の遅れた小・零細企業の苦しい状況を浮き彫りにしている。
    • 業種別では、コロナ禍で休業や時短営業を揺曳された飲食業が102件(前年度比70.0%増、前年度60件)で最多。内訳は、 「食堂,レストラン」(15→22件)、「バー,キャバレー,ナイトクラブ」(6→20件)、「酒場,ビヤホール」(13→19件)など。次いで、「飲食料品卸売業」が11件(前年度比450.0%増、前年度2件)と、飲食関連の増加が目立った。
    • 一方、リモートや在宅勤務の広がりで巣ごもり需要の恩恵を受けた「飲食料品小売業」は10件(同50.0%減、同20件)と、半減した。
 
  • テレワーク拡大の可能性 ~「移動」からみるアフターコロナ~ 三井住友信託銀行 調査月報 2021 年 4 月号  発行2021年3月
  • 新型コロナ感染拡大が始まってから1年あまりが経ち、人々の生活様式は大きく変化した。外出制限の中、デジタルを活用したオンライン化の進展で、通勤・通学しなくても在宅で業務や学習が可能となり、「移動」しなくても「目的」が達成できるようになった。特に通勤についてはテレワークの導入が首都圏中心に進み、2019 年は 20%程度であったテレワーク導入率は 53%まで上昇した。
  • テレワークの導入は今後も拡大し続けるのだろうか。企業は新型コロナの感染拡大防止のため、半ば強制的に ICT 高度化を進め、在宅勤務に耐えうるインフラ整備に取り組んだ。しかし、業務を進めるにあたっての労務管理やコミュニケーション面の課題は依然として多く、完全な在宅勤務には限界があり、今後も一定の移動や対面は必要になろう。
  • テレワークと一口に言っても、自宅で働く「在宅勤務」、移動中・移動先での「モバイルワーク」、サテライトオフィス等「施設利用型」と形も様々である。今後は必要な時に必要な場所に移動する「勤務形態の多様化」がポイントになるのではなかろうか。 
 
  • 新型コロナワクチンの世界的な接種開始に関わるリスクと課題 McKinsey & Company 2021年3月
    • 集団免疫を獲得し、ポストパンデミック期へと移行するためには、今後数ヵ月から数年に渡って、多くの人々が努力を続ける必要がある。本稿では、新型コロナワクチンの接種に向けた大規模な取り組みと固有のリスク、そしてワクチン接種を加速させるための対策案について考察する。
    • ワクチン接種のプロセスのどこかで課題が発生すると、次々に影響が広がり、システム全体が機能不全に陥る可能性がある。
    • ワクチン接種を受ける側の観点では、特に発展途上国の社会インフラが脆弱な地域の人々は、接種実施機関へのアクセスが困難、ワクチンを受けるために仕事を休むことができない、子供の面倒を看てもらう人を手配できないといった追加的な課題に直面する可能性がある。また、関係当局への歴史的な不信感も障壁になりうる。さらに、ワクチンに対する懐疑心も、米国を含め、一部の人々に影響を与えている。
    • 新たに特定された重大リスク
      • 生産体制の拡充に伴う原材料の供給制約
      • 製造過程での品質保証に関わる課題
      • コールドチェーン物流と保管・管理に関わる課題
      • 人手不足
      • 医療現場における廃棄問題
      • IT 活用の課題
    • 新たに特定されたリスクを低減するための協働的なアプローチ
      • 承認申請中のワクチンそれぞれの個別需要に対応するためには、多様なグローバルサプライヤーとの提携が不可欠となる。
      • 組織間のインターフェースにおけるリスクの管理
 
  • コロナ危機下なぜ企業倒産は増えないのか ―政府支援策とキャッシュ積み上げで 4,000 件抑制―  ㈱日本総合研究所 2021 年3月 29 日 No.2020-048
    • 新型コロナ感染拡大の影響から、2020 年の実質 GDP は 27 兆円も落ち込んだ。まさに、2009 年の世界金融危機時に匹敵する落ち込みである。しかし、当時と大きく異なるのは、倒産件数がほとんど増えていないことである。東京商工リサーチによれば、2009 年の倒産件数は 15,480 件であったのに対し、2020 年は 7,773 件と半分程度に抑制されている。この要因として、以下の2点を指摘できる。
    • 第1に、政府・日銀による中小企業向け資金繰り支援である。一定の前提条件のもとで試算すると、民間金融機関等による貸出や政府による持続化給付金などの財政措置によって、倒産件数は 3,000 件ほど抑制できたとみられる。
    • 第2に、コロナ危機以前からの企業のキャッシュ保蔵である。2013 年以降の景気拡大期に収益環境は大きく改善したが、企業は投資を抑制し、現預金を積み上げてきた。これにより、企業倒産は 1,000 件ほど回避できたとみられる。
    • 経済危機時に企業倒産が急増すると、長期失業者や就業意欲喪失者が急増し大きな社会不安が生じるが、これを食い止めたという意味で、今般の資金繰り支援は十分評価に値する政策だったと判断される。
    • 今後、重要なことは、当面のウィズコロナにおいても、企業が付加価値を着実に拡大していけるかどうかである。企業は、事業のオンライン化・業務のデジタル化によって、感染拡大や自然災害が発生した時でも売上を確保できる態勢を整備していく必要がある。同時に、人口減少が進行するなか、既存事業の継続や品質改善に終始するのではなく、消費者の潜在需要を満たす、新しい製品・サービスの創出に今まで以上に注力していくことが求められる。
 
  • 内部留保とコロナ禍  国立国会図書館 調査及び立法考査局 調査と情報―ISSUE BRIEF― 第1145号 No. 1145(2021. 3.29)
    • 一般に「内部留保」は貸借対照表上の純資産の項目である利益剰余金を指す。利益剰余金は企業が獲得した利益のうち株主(出資者)に分配されずに企業内に蓄積されたものである。
    • 日本企業の利益剰余金は、額のみならず総資本に占める比率においても顕著に増加している。利益剰余金の増加は労働分配率の低下や企業が保有する現預金の増加とも関連している。
    • コロナ禍を受けて、企業は手元の現預金や金融機関からの借入等によって資金繰りを確保している。コロナ後に向けては、借入金の円滑な返済や設備投資の促進が課題となる。
    • 「内部留保」をめぐる諸議論の前提となる状況、すなわち総資本に占める高い利益剰余金比率、賃金・設備投資の抑制と現預金の蓄積といった日本企業の傾向が早期に変化する可能性は低く、今後も日本企業の「内部留保」は議論の対象となることが予想される。その際には、利益剰余金と現預金の蓄積を好む企業の姿勢がコロナ禍においてはプラスに働いたことと、日本経済の持続的成長の観点からはそのような姿勢が必ずしも望ましくはないこととの相克をいかに克服するかが重要な論点になろう。
 
  • 日本がワクチン開発に出遅れたのはなぜか 乏しい危機管理意識と初めから二番手目指すリーダーの姿勢 2021.3.29(月)横山 恭三 JBpress
    • なぜ、日本はワクチン開発で出遅れたのか。一言で言えば、政府の本気度の低さである。日本は初めから外国のワクチン頼りであった。他方、諸外国は国を挙げて、官民協力して必死に開発に努力したのである。当然、そこに膨大な資金と人材を投入している。
    • ワクチンは、国民を感染症およびそれに伴う疾病から防御するため、必要に応じて即座に利用できる体制が整備できていなければならない。危機管理の観点などから、戦略的に必要性が高い医薬品である。つまり戦略的物資である。
    • ワクチンの開発には巨額の資金が必要で投資リスクが大きく、参入企業が少ない。従って、国が全面的にバックアップしなければワクチン開発の成功は期待できない。
      • 日本のワクチン開発資金について言えば、政府は令和2年度の3次にわたる補正予算にコロナワクチン開発・生産支援を盛り込んだ。第1次補正が100億円余り、第2次は国内外で開発されたコロナワクチンの国内生産用の施設、設備に約1400億円、第3次が国内開発にかかる約1200億円である。合わせても2700億円である。
      • 単純比較はできないものの、米国が2020年5月に打ち出したワクチン開発計画「オペレーション・ワープ・スピード(Operation Warp Speed:OWS)」の予算は1兆円規模である。欧州や中国も同程度を確保したとされる。
      • 国民に一律現金10万円が給付された特別定額給付金の予算総額は12兆8803億円である。
    • 従来のワクチン開発には10年以上かかるとされる。ところが、米ファイザーの「mRNAワクチン」や中国シノファームの「不活性ワクチン」は1年足らずで実用化されている。なぜこのように開発期間を短縮できたのか。それは、各プロセスの並行処理、各フェーズの並行処理、研究開発に並行した生産体制の整備および薬事承認の迅速化によって達成されたものである。
    • 中国のワクチン開発の特徴
      • ①省庁横断の「ワクチン専従班」に強い権限を付与し24時間体制で開発を支援
      • ②平時の7倍以上の人材、設備を投入
        • ワクチンの動物試験は通常、例えば小ネズミで試験を行った後、大きなネズミ、次にウサギ、ブタ、サルなどと7種類の動物で1種ずつ行い、それぞれでデータが出るのを待って次の動物へと順繰りに進めていくのが普通とされる。それを今回の開発では7種類の動物をすべて同時並行で、さらにはワクチン量を分けた試験も同時並行で進める方式をとった。
      • ③技術的に成熟した「不活型ワクチン」に狙い
    • 米国のワクチン開発の特徴
      • ①国家プロジェクトの存在
        • 「オペレーション・ワープ・スピード」は、産官パートナーシップによる巨大プロジェクトであり、HHS(米保健福祉省)や傘下のCDC(米疾病対策センター)、FDA(米食品医薬品局)、NIH(米国立衛生研究所)、BARDA(米生物医学先端研究開発局)に加え、米国防総省や米農務省、米エネルギー省、米退役軍人省、そして民間企業を巻き込んだ横断的なプロジェクトになっている。 さらに、米国防総省からはDARPA(米国防高等研究計画局)の研究開発機関も関与するとされている。
      • ②軍民一体の開発
        • 「製造過程での感染リスクが低く、遺伝子情報さえ分かれば1カ月前後で開発でき、化学薬品と同じ要領で化学合成を通じて量産できる。すなわち、mRNAワクチンやDNAのワクチンが軍に適しているのである」
      • ③トップのリーダーシップ
      • ④先見性を持った研究者
        • 「過去20年のアウトブレイクの一覧を見れば、そのうち2つのウイルスがコロナウイルス科であったことが分かる。再び発生しても驚くにはあたらない」
    • 日本がワクチン開発で出遅れた理由
      • (1)政府にはワクチンを何が何でも国産するという強い意志がなかった。
        • 政府は当初から海外ワクチン頼みであった。
      • (2)ワクチン産業基盤の弱体化
        • 現在、欧米では巨大製薬企業がワクチン開発をリードしているが、日本では、中小企業や大学、研究所ばかりで、大手の製薬企業はあまり積極的ではない。
        • 日本でワクチン産業が落ち込んだ背景には、1970年代からのいわゆる「予防接種禍」がある。このため、国、国民、メーカーなどが予防接種そのものについて消極的になり、国内の開発・製造力が、極めて限定的になった。
        • 政府は、海外ワクチンの国内企業の受託生産によるワクチンの長期安定調達を目指す考えである。
      • (3)日本の危機管理能力の低さ
        • 日本大学危機管理学部教授の福田充氏は、「戦後日本は欧米先進国と比べて、安全保障におけるインテリジェンス活動や危機管理の弱さが指摘されてきたが、それは戦争やテロリズムに限ったことではなく、こうした感染症の発生と流行においても同様のことである」と述べている。
        • 危機管理で肝要なことは、最悪のシナリオを作成し、訓練し、問題点を把握し、危機に備えることである。
        • 危機管理で肝要なことは、危機に対応する「司令塔」を設置し、「権限」を与えることである。前述したように中国、米国は、省庁横断の司令塔を設置し、国を挙げて、ワクチン開発を支援した。
      • (4)ワクチンが重要な戦略物質であるという認識不足
        • ワクチンの開発力は安全保障上も重要であるという認識が広がっている。これは新型コロナウイルスワクチンに限ったものでない。
        • ワクチン開発能力を含め我が国のバイオテロ対応能力は全く不十分である。東京五輪を控え、テロリストなどの非国家主体からのバイオテロの脅威への対応も急務である。
    • 今回のワクチン開発競争や獲得競争で日本が後れをとった理由は、かつて第2次大戦末期の原子爆弾の研究・開発に失敗した理由と共通するものがあると考えている。日本は、ワクチン開発と同じように初めから本気度で米国に負けていたのである。
    • これらの事例は、危機管理においては結局、リーダーの先見性と失敗を恐れない勇気ある行動がカギになることを示している。
       
  • コロナ禍で後退した地方自治を検証する――片山善博(早稲田大学大学院政治学研究科教授)【佐藤優の頂上対決】 週刊新潮 2021年3月25日号掲載 デイリー新潮
    • 「新型インフルエンザ等対策特別措置法」は、国と地方の権限をはっきり分けている。まず国、内閣総理大臣の権限は、緊急事態宣言を発するか発しないかの判断にあります。それを発する要件も書いてあります。一番重要なのは、感染経路不明者が出ているかどうかという点です。
    • 総理大臣が緊急事態宣言を出せば、各知事が一定の範囲で店舗の営業自粛や施設の使用停止の要請をすることができます。どこに、どう要請をするかは、各都道府県知事の判断に委ねられている。これが地方の権限です。
    • 混乱した原因の一つは、緊急事態宣言を出した際、政府が知事の権限発動の具体的内容までを記した「基本的対処方針」を文書で出してしまったことにあります。対象となった地域は、これに従って一律に、四角四面にやらなければいけないと考えてしまった。
      • 「午後8時ではなく午後10時まで延長します」とか「緊急事態宣言は続いていますが、もう時短の要請はしません」という都道府県があってもいいのです。それは違法ではない。でもどうしたわけか、どこもそうは言い出しません。
      • 誤解していますね。緊急事態宣言が出ている地域の自粛要請の内容は決まっていて、時短要請をやめたり変更したりするなら緊急事態宣言そのものを解除してもらわないといけないと勘違いしている。間違った固定観念に囚われているのです。
    • 「国の方針なので、文句があったら国に言って」という立場で、独自の判断を避ける。でもそれは、自身の判断に自信がないということです。
      • 和歌山県の仁坂知事は、二つの点で他の知事とは違っていました。一つは、以前から保健所行政に強い関心を寄せていたこと、そしてもう一つは、国の通知に強制力はないと、はっきり認識していたことです。
    • 感染症対策のための保健所体制作りは、保険みたいなものです。何かあった時に、被害を最小限に抑えるための備えですが、それを無駄だと考えてきた。それで保健所を統廃合したり、職員を減らしたりして、さらには乳児健診や高齢者の健康指導といった日常的な機能に着眼して、市区町村に分けました。
      • 市区町村の保健所では、どうしても乳児健診や3種混合ワクチンの接種などが中心になります。そこでは感染症対策という本来の重要な機能が抜け落ちてしまう。こと感染症に関しては、せめて都道府県レベルに留めておかないと、うまく対応できません。市区町村では専門家もいないでしょうし、そもそも感染症の専門家自体が少ない。
    • ワクチン接種は予防接種法でやります。国がワクチンを調達して配分し、接種の実施主体は市区町村です。どこの会場でどういう順番でやればいいかは、それぞれで決めればいい。都道府県は調整したり、サポートしたりする係ですね。
      • どういう属性の人から優先して接種するかは、大枠は国が決めていいと思います。市区町村が判断すればいいことまで国がしゃしゃり出ては、かえって混乱しますね。地域差がありますから、それを念頭に置いて、市区町村で考えてくれ、と言うだけでいいのです。
    • 1999年に地方分権一括法が成立し、2000年から施行されました。この法律によって自治体が自分たちで決める領域が増えました。また関与の法定主義と言って、国が地方に何かをさせる際には、法律の根拠が必要となった。
      • 地方は国と対等だと全然わかっていない人も多いと思いますよ。理屈ではわかっていても体でわかっていないとか。わかっていてもあえて国の言う通りにした方がいいと考えている人もいる。
    • 私は今回のコロナ禍で地方自治が後退したと思っています。国と地方の関係がかなり昔に戻った。しかし中央の官僚には地方のことはよくわかりません。地方自治の原理は、地方のことは地方が責任を持って決める、です。地方分権改革の精神に立ち返って、いま一度、地方自治を検証する必要があると思います。
 
  • COVID-19 ワクチンの普及と開発に関する提言 2021 年 3 月 22 日 診療ガイドライン検討委員会 COVID-19 expert opinion working group
    • 本提言は、国民の皆様に COVID-19 ワクチンについて正しく理解していただき、わが国で COVID-19 ワクチンが安全かつ確実に普及することを目的としています。なお、内容の多くは、日本感染症学会の「COVID-19 ワクチンに関する提言」1)から引用しており、さらに一部の項目を追加しています。国内外の状況の変化に伴い、今後随時更新してゆく予定です。
    • <目次>
      はじめに
      1. COVID-19 の感染制御に、ワクチンが期待されています。
      2. COVID-19 ワクチンのはたらきについて理解が必要です。
      3. COVID-19 ワクチンの有効性の確認が重要です。
      4. COVID-19 ワクチンの安全性の確認が重要です。
      5. mRNA ワクチン接種後のアナフィラキシーについて注意と検証が必要です。
      6. 長期的なワクチンによる有害事象の観察が必要です。
      7. ワクチンの有効性に影響を与える「変異株」のサーベイランスが重要です。
      8. 高齢者等の優先接種者へのすみやかな接種が望まれます。
      9. 安全なワクチン接種体制を準備しておくことが必要です。
      10. 接種する医師・看護師は適切な筋肉内注射の方法を熟知する必要があります。
      11. 適切なワクチンリスクコミュニケーションが重要です。
      12. ワクチン接種後も基本的な感染対策が重要です。
      13. 安全で有効な国産 COVID-19 ワクチンの開発が求められます。
      おわりに
 
  • 塩崎恭久氏「明治以来の平時の発想ではコロナに勝てない」 公開日:2021/03/22 06:00 更新日:2021/03/22 14:02 日刊ゲンダイDigital
    • 第4波に備えるために必要な対策は何でしょう。要点は、有事は国が司令塔となるということです。日本は「武力攻撃事態法」で、武力攻撃を受けた際に国民の生命・財産を守る責任は国にある、と明記しています。知事に代わって国が責任を持つ「直接執行」を初めて入れました。この仕組みが感染症においても必要です。
    • ​感染症対策は「旧伝染病予防法」が制定された明治30(1897)年以来、基本的に同じ体制が続いています。知事が責任者、保健所がその手足として、感染症の発生原因を調査・把握する仕組みです。昨年6月の提言で「国が最終的に責任を持つ」ように変更を迫ったけれども、残念ながら、そうした構造的な改革はコロナ収束後ということに整理されてしまいました。
    • 特措法と感染症法の改正も「中途半端」。「知事が総合調整できる」と書いてあるだけです。調整できなければ、「できませんでした」で終わってしまう仕組みなのです。
    • 日本は保健所を中心に国立感染症研究所をトップとする公衆衛生の流れと、地域医療の流れがあり、この1年間で分かったことは、現状、公衆衛生が上、地域医療が下になってしまっています。
    • なぜ1年も「平時の発想」のままなのでしょう。前例踏襲主義ですよね。未知のウイルスは公衆衛生ムラが担うという明治以来の発想、すなわち、どういう敵であろうと、同じ体制で対処するという珍しい発想が続いています。変異株への対応にしても、感染研がゲノム解析を一手に担っている。
    • 感染研だけでは無理です。したがって、大学や民間と組んだ「官民ゲノム解析チーム」の創設が急務です。実は1日6000件、週3万件を解析できるベンチャー企業が国内にあるのです。米国の目標値よりも多く解析できる能力があるのに、厚労省・感染研はどうにも閉鎖的です。
    • 国が最低限に合わせる「護送船団方式」で対応してきた結果、輸出できるほどの企業を育ててこなかった。
      有事の「直接執行」が今こそ必要なのです。
    • 大学病院やその他公的病院に重症のコロナ患者の受け入れを要請・指示する権限を法律上、明確に定めることしか問題解決に至りません。大学病院など大規模病院が重症患者を受け入れ、中等症患者は公的病院や力のある民間病院などが受け持ち、軽症者や無症状患者は民間病院と宿泊施設が中心となるべきです。その割り振りを行う法的根拠を作らねばならないのです。
    • 知事に対する権限付与と、いざとなれば国が責任を持つ直接執行が重要なのです。知事がやらない時に国が代わりにやるのは、自治を侵していません。自治にゆだねた結果、「嫌だ」という知事に代わるのが国だからです。
    • 厚労省は自治体や保健所に事務連絡通知を出し続けています。とうとう1000通を超えました。太平洋戦争と同じです。みんなが自分の守備範囲を守った。しかし、結果は歴史に見るとおりです。「失敗の本質」ですね。
 
  • 【コロナ】政府によるロックダウンや外出規制、実は「経済損失に影響なし」との研究報告 藤 和彦 独法 経済産業研究所 2021年3月23日掲載
    • 死者数で30倍の開きがあるにもかかわらず、米国(マイナス6.36%)と日本(マイナス5.96%)の昨年のGDP損失はほとんど差がない。コロナのパンデミックでは健康被害と経済被害は連動していないのである(3月9日付日本経済新聞)。
    • 「政府によるロックダウン(都市封鎖)で外出できなくなり、サービス業への需要が落ち込んだ」と考えがちだが、最近の研究はこの見方を否定している。渡辺努・東京大学教授は「人々が感染を恐れて外出を抑制したことが需要減の真の原因である」と指摘しており、心理学の実験では、恐怖心の強弱と感染対策の行動(外出抑制やマスク着用など)との間には強い相関関係があるといわれている。
    • 人はしばしば知性で「恐怖」を乗り越えようとするが、このような試みは実を結ばない場合が多いといわざるを得ない。世界に冠たる超高齢社会である日本では、「効率」よりも「安全・安心」の価値を高くすることが「恐怖」に打ち勝つ最善の方策なのではないだろうか。
 
  • 「Go To キャンペーン」、経済理論上なにが問題だったか -課題はタイミングと価格設定 2021年2月10日 岡三グローバル・リサーチ・センター理事長 エグゼクティブエコノミスト 高田 創
    • 日本の旅行市場規模は、全体で約28兆円と日本のGDPの約5%に相当する。そのなか、訪日外国人旅行(インバウンド)は4.8兆円と全体の約17%程度にすぎない。すなわち、83%と、旅行業の大宗は日本人によるものである。
    • インバウンドの規模が4.8兆円で、日本人の海外旅行の規模も4.8兆円であり、両者は殆ど同じ水準である。たとえ、インバウンドがゼロになっても、日本人の海外旅行分が国内旅行に振り替われば、日本全体の旅行金額は変わらないとい う計算になる。
    • コロナ感染における負の外部性(感染拡大)を抑制するにはピグー税のような形で課税(価格引き上げ)を行って活動を抑制する対応が考えられる。それは、「Go To トラベル」で価格引き下げによる供給曲線の下方シフトとは真逆の対応、すなわち、価格引き上げとなる。すなわち、「Go To キャンペーン」は経済理論上、真逆の対応との評価もできる。
    • 一方、「Go Toキャンペーン」が望まれるタイミングは、コロナ感染が収まったものの、国民の行動変容が生じる段階、例えば「風評被害」等も含めて、リゾート産業への需要が戻っていない状況と考えられる。今回は急ぎ過ぎたということになるだろう。
    • 今回のコロナショックに対しては、密を回避するという名目で価格設定の考え方を大きく転換するチャンスにつながる。コロナショックを奇貨とした改革が重要になる。供給構造の変動に制約があるなか、時間帯等による需要構造が変化する産業では、ダイナミックプライシングとして価格を時間に応じた需要動向に変える動きも拡大しやすい。
    • 需要者側では休日への集中を回避して平日での休暇取得増加による滞在型になることでのリゾート施設の効率利用促進が可能となる。「Go To トラベル」とした国内旅行促進インセンティブ策を策定したが、本来、混雑が見込まれる休祭日を避け、平日に限定することも考えられた。
    • 国内リゾート産業をインバウンドが回復する前の2・3年の時間軸で充実させることで、インバウンドの復活に備える重要な時間軸を想定しておくことができる。
 
  • 【重要】変異「種」の誤用について(報道機関 各位) 日本感染症学会 2021年1月22日 最終更新日:2021年1月27日
    • 国内の報道においては、変異“種”という表現が一部報道機関で統一して用いられているようですが、これは学術的には誤用となりますので、今後は変異“株”と正しく表記していただきたくお願い申し上げます。
    • 理由および解説
      • 突然変異はすべての生物において、遺伝子の複製過程で一部読み違えや組み換えが発生し、遺伝情報が一部変化する現象です。
      • この中で、新しい性質を持った子孫ができることがあります。この子孫のことを変異“株”と呼称します。変異株は、変化した遺伝情報の影響を受けた一部の性質が変化していますが、もともとの生物の種類は変化していません。この場合、同じウイルスの複製バリエーションにすぎませんので、ウイルスの名称は変化しません。
      • しかしながら、極まれに近縁の生物種の間で多くの遺伝子の交換(組み換え)が起きると、2つの生物種の特徴を併せ持った新しい生物種が誕生することがあり、その場合には変異“種”と呼称します。この場合、新型のウイルスが誕生することになるので、新しいウイルスの名前が与えられます。
      • 今回の変異株は、新型コロナウイルスのスパイクタンパクにN501Yという特異的な変異が起こり、宿主細胞への感染力が強くなったという性質の変化がありますが、元来もっていた新型コロナウイルスの基本的特性はほとんど引き継がれておりますので、依然として新型コロナウイルスのままですので、変異“株”と呼称すべきです。
 
  • 特集:データで見る日本経済の「不都合な真実」 溜池通信 vol.708 Biweekly Newsletter January 22 2021 双日総合研究所 吉崎達彦​ 
    • V-RESASのグラフから見えてくる「コロナ下の日本経済」について確認しておこう。
      * 移動人口の動向:予想通り、昨年 4~6 月の落ち込みは深い。逆に今年 1 月の緊急事態宣言以降は、人の移動がそれほど減っていない。
      * 決済データ、飲食店情報など:予想通りの動き。POS で 10 月に凹みがあるのは、前年9 月に消費税増税に伴う駆け込み需要があったことによる反動であろう。
      * 宿泊者数:昨年秋時点で「Go To キャンペーン」がいかに効果的だったかがよく分かる。特に 10 月に東京都が参加したことによる効果は大きかった。
      * イベントチケット販売数:エンタメ系の消費需要はまだ瀕死状態である。
      * 求人情報数:漸増傾向にあるとはいえ、水準はまだまだ低い。
    • V-RESAS のデータを見ていて興味深いのは、全国がほとんど同じ動きをするものもあれば、地域ごとにまるで違うものもあるということだ。たとえば移動人口の動向はほぼ全国共通(左下)だが、決済データから見る消費動向はかなりバラつきがある(右下)。これだけ地域による状況が違うのであれば、「全国一律のコロナ対策」はかえって害をなすことが多くなりそうだ。
    • 「国民 1 人 10 万円の給付金はどうなったのか?」マクロで見れば給付金は丸々貯蓄に回っており、消費刺激に役立っていないことは自明である。そのまま銀行口座に積み上がり、国債購入に回っているのではないだろうか。
    • 最近はやりの言葉で言えば「K字型回復」であり、製造業は上向きに、非製造業は下向きにとくっきりと明暗を分けてしまう。2020 年の年間インバウンドは、前年比 87.1%減の 411.6 万人となった。そしてこの部分の回復は当分見通せない。このままいくと、「K 字型」の股割き状態は拡大する一方なのではないか。
       
  • 政府はコロナにどう向きあったか(上) 2020年度、国の財政の軌跡 January 19, 2021
    政府はコロナにどう向きあったか(下) コロナ対策とその課題 January 22, 2021
    • 政府はコロナ対策として、2020年4月、6月および12月にわたって三つの補正予算を編成している。
    • 日本の財政はコロナ以前から自前財源では歳出を到底賄えない状態だったということである。
    • 一連の補正予算によるコロナ対策を含む歳出の拡大によって、一般歳出は国の自前の財源の288.7%、ほぼ3倍近くまで増大した。その結果、基礎的財政赤字は、自前の財源のほぼ2倍となり、その額は88.5兆円に達した。すでに述べたように、これに利払費を加えた赤字額は100兆円近くとなり、国債によって賄われる。
    • コロナ対策では、給付金、資金繰り対策、および緊急小口資金等の特別貸付を通じた「資金援助」が圧倒的に大きな割合を占めていることがわかる。続いて、予備費、感染防止等、地方創生臨時交付金、GoToキャンペーン事業等となっている。主として第3次補正によるコロナ対策以外の支出も9兆円に達し、相当の規模である。
    • 課題1:支援金回収の必要性
      コロナの被害がなかった、あるいは軽微ですんだ人々や企業から、コロナ禍の支援金の回収を図らなければならない。特別定額給付金、資金繰り対策のための費用がそれぞれ12.8兆円と18.6兆円、合計で31.4兆円にも及んでいることを考えると、ポストコロナにおいて、その回収は何としても進めなくてはならない。
    • 課題2:一括支出の見直し
      4兆5000億円にもなる「地方創生臨時交付金」である。これは、コロナ禍で落ち込んだ地方交付税交付金の補填に加えて支給される。問題となるのは、この一括交付金がコロナ対策のためにどのような形で使われ、どのような効果を生むのか不明なことだ。また、国の事業との重複も否めない。
      一括支出の問題では、国も例外ではない。予備費として、使途について説明のないままに11.5兆円計上されている。その後、第3次補正予算で1兆8,500億円の減額がなされているが、10兆円近くの巨額の予算がこのような形で使われるべきではない。それによって、政府自身も政策企画・執行力の弱体化、結果への責任希薄化という新たな問題を抱えることになる。
    • 課題3:補正予算のあり方
      2020年度の補正予算、とくに年度最後の第3次補正予算のあり方について、一言述べておきたい。国土強靭化、デジタル化・グリーン化など、それ自身は重要な施策だ。しかし、コロナ感染のただ中の国会で、補正予算に割くことのできる審議時間も限られたなかで、集中すべきは感染収束のための予算である。そのほかの財政措置は、腰を据えて、年度全体に係る当初予算で進めるべきである。
 
  • 総理官邸が陥っている「認知バイアス」が国民の命を危険にさらす 香山リカ 2021/01/19 21:49 note
    • 「認知バイアス」とは最近、心理学の分野で注目されている、病的な現象ではない正常の心理現象のひとつとしての認知のゆがみ、かたよりを指します。
    • 私たちはときには「見たくないものは見なかったことにする」という認知のゆがみを起こすことで、あまりのストレスから自分がつぶれてしまうことをうまく回避します。この認知バイアスと重なる現象として、精神分析学者のフロイトの報告した症例をもとに娘のアンナ・フロイトがまとめた「心理的防衛機制」という無意識の働きもあります。
    • 「確証バイアス」とはその認知バイアスのひとつで、「自分にとって都合のいい情報にばかり注意が向き、反証する情報を無視しようとする傾向のこと」をいいます。ひとつの思い込みにとらわれ、たくさんの情報の中からそれを正当化してくれるものだけを選び取って読み、「ほら、この論文も私の意見が正しいことの裏付けになっている」とますます自分の最初の思い込みを強めていく、とてもやっかいな心の働きです。
      ここ二十年ほどの日本のさまざまな歴史修正主義的主張、原発事故後も続く”安全神話”、そして今回のコロナ対応、すべてにこの「確証バイアス」は強く関係していると思います。
    • (国民の命がかかわったコロナ対策に関して)、総理が「こうであってくれたらうれしいのに」と思っていたような意見を述べた人を目ざとく見つけ、すぐに面会し、「明るい話を聞いた」などと本音をもらすのはたいへんに問題です。せめて「ひとつの意見として拝聴した」くらいにとどめておくべきでした。
      • 16日の夜、マスメディアはいっせいに菅総理大臣がその日の午後、総理大臣公邸で大木隆生氏とおよそ1時間面会したことを報じました。NHKのサイトによると、大木氏は面会後、報道陣に「医療崩壊ということばが盛んに言われているが、97%、96%のベッドがコロナに使われず、一般の医療に使われており、余力が日本にはある。民間病院が、商売として『コロナをやりたい』と思うぐらいのインセンティブをつければ、日本の医療体制は瞬く間に強化される」と菅総理に語ったことを明らかにしました。それに対する総理の反応は、「久しぶりに明るい話を聞いた」だったそうです。
 
  • コロナ禍と医療イノベーションの国際比較①(総論) 2021 年 1 月 11 日 松山 幸弘  キャノングローバル戦略研究所
    • 1.医療イノベーション研究の軌跡
    • 2.初期の医療 IT 投資からデジタルヘルスに至るプロセス 
      • 全体最適のためには医療機関と保険者の連結が不可欠
        • ​コロナ禍でこの連結経営の医療体制のメリットが鮮明になった。日本では、コロナ感染を恐れて国民が通常医療の受診を控えた結果、医療機関の収支が悪化していることが問題になっている。米国のカイザーでも保険加入者による通常医療の受診控えが起こった。しかし、保険加入者の受診 控えは保険部門の増益要因である。カイザーは保険収支の黒字増加分をコロナ対策に使った。
    • 3.世界最先端を駆けるカイザーの組織カルチャー 
      • カイザー(Kaiser Permanente)は全体最適の意思決定をする組織の理想型
        • 世界最大の民間 IHN(​Integrated Healthcare Network:組織形態が非営利ホール ディングである医療事業体)
        • ​具体的には、企業でいう課レベルの組織単位から責任者を医師と非医師の 2 名にすることで、常に医療の質と対費用効果の両面から課題解決の追求をし、患者となる保険加入者にとってベストは何かを考えさせる仕組みである。その現場の意思決定が積み上がることで、経営トップが超複雑系の医療経営で的確な判断ができているのである。
    • 4.コロナ禍で鮮明になった日本の医療制度の欠陥と解決策 
      • 単位人口あたり感染者数が米国の 30 分の 1 以下で医療崩壊
      • 医療崩壊の元凶はコロナ医療と通常医療の混在
      • 民間病院にコロナ患者受け入れ要請は的外れ
      • 必要な法改正は完了している
        • ​国公立病院、国立大学付 属病院を人口 50 万人~100 万人の広域医療圏単位で経営統合することである。意思決定が一元 化されれば、危機管理のために人材シフトや施設の機能変更を迅速にできるし、平時の仕事を通 じて信頼関係、チームワークが醸成される。
      • 日本版 IHN を非課税永久債で構築する
        • ​日本版 IHN が非課税永久債(債券購入者の利息の所得税が非課税)を発行する制度を提案したい。この資金を使って、日本版 IHN が参加する国公立病院と国立大学附属病院を買い取るのである。これは、国民の貯蓄でセーフティネット事業体を構築、医療改革を進める ことを意味する。
        • 米国、英国、オーストラリアの IHN の多くは地域最大の雇用主である。必要とする専門人材の種 類が多岐にわたるため、IHN は巨大な人材育成機関でもある。地域の若者たちにとって IHN に就 職することがステイタスとなっている。つまり、政治の力で日本版 IHN を一気に構築することは、コロナ禍克服に役立つのみでなく、新規雇用創出で地方再生につなげる有効な方法なのである。
  • 「声明」 大隅 良典、大村 智、本庶 佑、山中 伸弥 2021 年 1 月8日
    • 過去一年に渡るコロナ感染症の拡張が未だに収束せず、首都圏で緊急事態宣言が出された。現下の状況を憂慮し、我々は以下のような方針を政府に要望し、実行を求める。
      一、 医療機関と医療従事者への支援を拡充し、医療崩壊を防ぐ
      二、 PCR 検査能力の大幅な拡充と無症候感染者の隔離を強化する
      三、 ワクチンや治療薬の審査および承認は、独立性と透明性を担保しつつ迅速に行う
      四、 今後の新たな感染症発生の可能性を考え、ワクチンや治療薬等の開発原理を生み出す生命
      科学、およびその社会実装に不可欠な産学連携の支援を強化する
      五、 科学者の勧告を政策に反映できる長期的展望に立った制度を確立する
  • 医療危機に「国民のがんばり」で立ち向かう、戦時中と変わらぬ日本の姿 窪田順生:ノンフィクションライター 2021.1.7 4:10 DIAMOND online
    • 全国800以上の急性期病院のビッグデータを有するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの分析でも、緊急事態宣言を境に多くの病院の経営が急速に悪化していることが明らかになっている。外出自粛で新規感染者数は減ったが、同時に感染を恐れてコロナ以外の患者も病院に近づかなくなったことで、通常の医療をしている病院の収入がブツリと途絶えてしまったからだ。
    • 本来、国家が国民に「経済死」を強いるなどということは、最後の最後にやる奥の手だ。しかし、今の日本政府はまだ手を尽くしたとは言い難い。 その最たるものが、コロナ医療資源の「偏在」の解消である。
      今回の問題の本質は、1400万人という世界有数の大都市であり、医師が4万人以上、看護師が10万人以上もいる東京が、コロナ重症患者100人たらずで「崩壊」してしまったように、日本の医療資源のポテンシャルを活かしていない「戦略ミス」にあることは明白だ。
    • わかりやすく言えば、一部の病院だけに重症患者が集中して「野戦病院」のようになっている一方で、コロナ患者を受け入れることなく、いつも通りにのんびりとした診療を行っている病院も山ほどあるのだ。
      「無策」を放置して、「国民一丸となって頑張るぞ」と突き進むと、結局最前線で戦っている人たちや国民に、多数の犠牲者が出る。そんな悲劇が過去にもあった。そう、先の太平洋戦争だ。
    • その象徴が、一説には140万人とも言われる日本軍の膨大な餓死者だ。自身も復員経験のある歴史学者の藤原彰氏の『餓死した英霊たち』(ちくま学芸文庫)によれば、日中戦争以降の軍人・軍属の戦没者数約230万人のうち、140万人(全体の61%)は餓死、もしくは栄養失調による病死だと推察されるという。
    • この構造は戦地の兵士だけではなく、国民にも当てはまった。「欲しがりません勝つまでは」などというスローガンのもとで、「贅沢は慎め」と自粛ムードが社会を支配する中で、国民一丸となって頑張った。
    • 日本看護協会が昨年、コロナ感染者を受け入れた病院の21%で看護師が離職したことを明らかにしたことからもわかるように、「第1波」時程度の感染者数であっても、コロナ医療の現場は日本軍のガタルカナル島の戦いのように、厳しい消耗戦を強いられたのだ。
    • 筆者が今の日本と戦時中の日本のムードが丸かぶりだと感じるのは、政府が後ろ向きな「緊急事態宣言の発出」を多くの国民が望んでいるという点だ。要するに、国民の「自粛意識」が政府のそれを飛び越えてしまっているのだ。
    • 令和日本にもそんなポピュリズムの匂いが漂う。最前線で戦う人々が援軍もないまま次々と倒れているのに、「戦略ミス」を認めず、ただひたすら国民に「自粛」を呼びかける。根本的な問題が解決されないので、犠牲者はどんどん増えていくのだ。
    • 「コロナ敗戦」という言葉が頭にちらつくのは、筆者だけだろうか。
  • 「飲食店の制限だけでは1ヶ月で感染者は減らない」 8割おじさんが厚労省“非公開”のシミュレーションを公開 BuzzFeed 公開 2021年1月5日
    • ※インタビューは1月5日午前Zoomで行い、その時点での情報に基づいている。
    • 緊急事態宣言を打つ時に、
      1.どこをゴールにして
      2.どういう内容を
      3.どれぐらいの期間
      打つかということが重要になるんです。
    • 厳しい対策を打たなければ、実効再生産数は十分に下がらない。政府が現状打ち出している限定的な制限だと青色の0.9倍ぐらいまでしか落ちず、実効再生産数は1前後で感染者は横ばいとなることを見込んでいる
      第1波の緊急事態宣言中の実効再生産数は0.54〜0.57ぐらいでした。
    • 宣言期間自体はどんな対策を打っても第1波の時よりも長くならざるを得ません。1か月で済ますにはロックダウンのように外出を禁止するような接触減をしないといけませんが、それは日本ではできないのです。最速でも2ヶ月はかかる、というのが結論ですね。
    • 急所だけを狙う政策だと、仮に実効再生産数が1未満に下がっても1に近い値になるので、長く対策を続けることが必要になります。仮にずっと続けるならば、年度が開けても、宣言が終わらないことを覚悟しなければならないかもしれません。

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